モーターの絶縁診断では、絶縁抵抗試験(メガリング)では判定できない絶縁物の劣化状況を、電動機を分解せずに内部の絶縁物の状態を把握することが可能です。こちらでは「直流吸収試験(PI試験)」、「静電正接試験(tanδ)」、「交流電流試験」、「部分放電試験」、「サージ試験」が対応しております。

精密絶縁診断

電動機は、常にストレスを受けています。

低圧・高圧電動機の予防保全をおこなっております。

 

 

当社が提供する精密絶縁診断では、
絶縁抵抗試験(メガリング)では判定できない
絶縁物の劣化状況を、電動機を分解せずに
内部の絶縁物の状態を把握することが可能です。

 

 

 

 

絶縁抵抗値測定(メガリング)と精密絶縁診断の違いとは

絶縁抵抗値測定と精密絶縁診断は、どちらもモーターの絶縁物の状態を確認しますが、
目的や方法、特徴などが大きく異なります。

 

絶縁抵抗値測定
(メガリング)

精密絶縁診断
目的

絶縁状態を定量的に測るための
基本的な試験
(現状の瞬間的な値)

絶縁物の劣化の進行具合や
吸湿、汚損状態をより詳細に分析し、
予防保全や寿命判断に活用する。

方法

絶縁抵抗計(メガー)を使い、
絶縁抵抗値[MΩ]を測定。

高度な専用の診断装置を使い、
PI(極化指数)試験やtanδ、
部分放電試験をおこなったりします。

特徴

定期点検にて広く行われていますが、
瞬間的な数値のみを測定するため、
劣化が進行しても、
数値上は問題ない場合もあります。

 

例)モーターやケーブルが濡れていたり、
汚れていた場合でも
絶縁抵抗値は下がるが、
モーター内部が劣化しているとは限りません。

測定するのに時間はかかりますが、
絶縁の経年劣化傾向や
異常の予兆検出が可能で、
高圧モーターや重要機の
傾向管理に用いられます。

 

例)絶縁抵抗値は良好、
絶縁診断の結果が不良の場合は、
運転中突然焼損(故障)する
可能性があります。

 

 

 

 

実際の試験比較(低圧機)
コイル巻き替え前 コイル巻き替え後
所見

絶縁抵抗値は4240[MΩ]と
問題なさそうですが、
直流吸収試験(PI試験)の結果が
悪かったため、
予防保全のため巻き替えました。

コイルを巻き替えた結果、
全ての試験結果が良好となりました。

測定結果

巻き替え前測定結果

 

時間経過とともに漏洩電流が増えていき、
絶縁物の劣化が疑われる結果

巻き替え後測定結果

 

時間経過とともに漏洩電流は少なくなり、
正常な結果となった

総合結果 巻き替え前総合結果 巻き替え後総合結果

 

 

上記は絶縁抵抗値は良好でしたが、絶縁物は劣化していたという事例です。

今回のモーターは絶縁抵抗値は良好でしたが、もっと状態が悪いモーターもあります。

 

日常的に絶縁抵抗値の測定(メガリング)も大切ですが、

定期的に精密絶縁診断をされ、予防保全されることも重要です。

 

 

当社では、総研電気㈱製の試験装置とパソコンソフト(Coil Doctor)を組み合わせ、
精密な絶縁状態を総合的に判定できます。

 

診断内容 汚損

絶縁物の
枯れ

直流吸収試験
(PI試験)

コイル表面の吸湿・汚損を判定します。

静電正接試験
(tanδ試験)

絶縁層内部の吸湿・汚損・
ボイドの状態を判定します。

交流電流試験
※高圧機のみ

絶縁層内部の
ボイドの状態を判定します。

×

部分放電試験
(コロナ放電試験)
※高圧機のみ

絶縁層内部の劣化度を判定します。 ×

サージ試験
(インパルス試験)

電圧振動波形の対比から
巻線の異常を判断します。

×

 

 

 

 

 電動機の絶縁劣化のメカニズムから絶縁診断試験内容を簡単にご紹介します。
万が一試験結果が不良であっても、当社にてワンストップの整備を承ります。

 

絶縁劣化の主な要因について

絶縁劣化のメカニズム2

 

 

熱的要因

 ・熱劣化は絶縁物が長期の運転による加熱のため、絶縁物を構成する樹脂材料の熱分解や
  揮発性物質の熱膨張により絶縁層内にボイドが生じるようになり、電気的・機械的に
  絶縁性能が低下する。
 ・ヒートサイクル劣化は始動停止・負荷変動など巻線の冷熱サイクルに伴う絶縁物と導体間
  の温度差、および熱膨張差によって生じる剪断応力の繰返しよって生じる。

 

機械的劣化

 ・電動機自体の電磁力による振動や、外力による振動などで摩耗や曲げ歪みが繰り返されて生じる。

 

物理・化学的劣化

 ・環境の影響が主で、ダスト汚損や吸湿による絶縁表面抵抗の低下や、絶縁物の亀裂部分に
  侵入した場合は体積絶縁抵抗値が低下する。

 

参考文献:山下 彊『電動機のメンテナンス』サン印刷

日本プラントメンテナンス協会

62pp.

 

 

モーターの絶縁が劣化した場合は、漏電または焼損につながるため、

突然のトラブル・予防保全・モーターの延命化のため、定期的な精密絶縁診断を推奨します。


精密絶縁診断をご希望の方は、お気軽にお問い合わせください。

 

お問い合わせ

 

 

 

 

 

 

移動可能な「精密絶縁診断車」を導入し、汎用の絶縁抵抗計(メガー)では、
測定できない劣化箇所をみつけ、予防保全に努めます。

低圧絶縁診断機(DAC-MAT-5)
自動絶縁劣化診断装置
(低圧絶縁診断機)

高圧絶縁診断車2

 

精密絶縁診断車

 

 

当社の診断設備では、
対象モーターの静電容量が183nF(0.183μF)を超えるモーターは、設備上診断できかねます。

 

 

またモーターの静電容量が条件を満たしている場合でも、
モーターの仕様によっては、診断できない場合があります。

 

高圧機の場合は、対象モーターから診断機までの距離が50mを超える場合には、
設備上対応できかねます。

 

また診断車付近に100V電源が必要となります。
絶縁抵抗値が著しく低下している場合には、診断を中止する場合があります。

 

 

※ DAC-6017、Coil Doctor、SOKENは、総研電気株式会社における登録商標または商標です

 

 

 

 

各種絶縁特性試験と判定
測定内容 特性 劣化 吸湿 汚損 損傷
1. 絶縁抵抗試験 絶縁抵抗値 (乾燥状態の場合)
増大
急減 減少 減少
2. 直流吸収試験 成極指数

(乾燥状態の場合)
増大

減少 減少

3. 誘導正接試験
(tanδ)

tanδ0
Δtanδ

減少
増大

急増
変化なし

増大
変化なし


4. 交流電流試験

電流急増点
電流増加点

低下
増大


減少
増大


5. 部分放電試験
(コロナ放電試験)

開始電圧
放電電荷量

低下
増大




急増

 

●絶縁抵抗値から絶縁物の吸湿や汚損状態を確認します

 

絶縁物に直流電圧を印加すると、ごくわずかの電流が流れ、電流と印加電圧の比を絶縁抵抗値と呼びます。

絶縁層の劣化、汚損・吸湿状態を測定しますが、測定時の気温や湿度等の影響もあります。

したがって、定期的な絶縁抵抗測定をおこない、長期的な経時変化から絶縁の状態を判定します。

 

当社の基準では、

低圧機は100MΩ以上、

高圧機は1000MΩ以上を良判定としております。

●吸湿、乾燥、汚損、ボイドの状態・劣化を推定します

 

絶縁物に直流電圧を印加し、絶縁抵抗値の10分後の値と

1分後の値の比の特性から絶縁層の吸湿・汚損状態を

診断します。

 

直流電圧印加後、時間とともに上昇する絶縁抵抗値は、

絶縁物の吸湿の度合いに左右され、吸湿しているほど、

電流が一定になる時間は長く、絶縁抵抗値は小さくなります。

 

また、絶縁体の漏れ電流の時間的増加の有無を調べる試験を、成極指数(せいきょくしすう)といいます。

 

【PI試験(成極試験)】

PI=1分後の電流値/10分後の電流値

絶縁抵抗値

1分値

[MΩ]

測定値が低下している場合は、

コイル表面が吸湿している可能性がある

絶縁抵抗値

10分値

[MΩ]

キック現象、局部劣化部分(ボイド)があると、部分放電により突変な特性の変化を起こす

当社の基準ではPIの値は、

2.0以上を良判定としております。

●吸湿・乾燥・汚損・ボイドの状態・劣化の程度を推定します

 

標準電流と充電電流の位相差を測定し、絶縁物・絶縁層の吸湿・表面の汚損、ボイドの状態を推定します。

 

 絶縁物にボイドのない状態で電圧を上げても、

tanδの値はほとんど変化しません。

tanδのグラフ

 

ボイドが存在すると、印加電圧に比例し、

ボイド内で部分放電するため、tanδの値は増加していきます。

tanδ

大きいと吸湿、コイル表面汚損が多い

絶縁物の劣化や絶縁層内部が吸湿状態

Δtanδ

大きいとボイドが多いが、

tanδとともに大きい状態であれば、

外部コロナの影響をうけ正確な判定が困難

 

tanδの比較グラフ

 

tanδ 大きい 小さい 小さい
Δtanδ 大きい 小さい 大きい
推定結果 ※1 健全 劣化

tanδ自体大きくなると、

ボイドに関する情報は

正確に得られない場合があります。

tanδ、⊿tanδともに小さいと、

吸湿がなく健全といえます。

tanδは小さく、Δtanδは大きいと、

含浸材は枯れています。

 

当社の基準では

tanδの値は、3.0以下を良判定

Δtanδの値は、0.9以下を良判定としております。

●固定子巻線と大地間に交流電圧を印加し、

絶縁層内部の吸湿状態やボイドの状態、絶縁物の状態を測定します。

 

絶縁物に交流電圧を印加すると、電圧に比例し充電電流も比例して増加しますが、

比較的劣化の進んだ絶縁物は、2つの電流急増点が現れます。

最初の電流急増点をPi1、2回目の急増点をPi2といい、Pi1が低い電圧で現れたりPi2が定格付近で現れると、

絶縁物が吸湿しやすい状況であるか、ボイド内の放電量が増加してきていると推測されます。

 

絶縁診断交流電流試験のグラフ

 

  • 第1次電流急増点(Pi1):吸湿時は、電流急増点が出現しにくい。乾燥の場合は劣化とともに低下。
  • 第2次電流急増点(Pi2):一般的には定格電圧以下では出現しない。出現条件はPi1と同一。

●コロナ絶縁層に交流電圧を印加し、発生したパルス電圧から

絶縁物内部の劣化状態を測定します。

 

1回のみの試験ではなく、経年劣化を把握するため、

定期的な試験を行い、傾向管理されることを推奨します。

 

※ボイド:絶縁物内部の微小な空洞のこと。

この部分で微小放電が発生し、絶縁破壊に至る可能性がある。

 

 

上記以外にも、抵抗容量積(RC[s])というものもあり、RC値とBDV(絶縁破壊電圧)[kV]との関係は、
劣化が進むと一般的にはRC値が小さくなり、BDV値が低下する場合が多いです。
時定数のグラフ

 

 

当社の基準ではRCの値は、
100[ΩF]以上を良判定としております。