かご形三相誘導電動機は、あらゆる方面に最も広く使用されており、
一般に電動機といわれるものの大部分はこの電動機で、次のような特徴をもっています。
かご形三相誘導電動機の構造
誘導電動機の主要な構成部品は
『固定子部分(ステーター)』と『回転子部品(ローター)』『軸受部品(ベアリング)』です。
ベアリングが組み込まれている「ブラケット」を取り外すと、
軸受部分(ベアリング)と回転する部分の「回転子(ローター)」があります。
固定子(ステーター)とローターの間の空隙は、効率や力率を向上させるため、
モーターの大きさにもよりますが、約0.5mm程度と極めて狭くなっています。
(狭くすればするほど磁束密度は大きくなりますが、その分機械的精度はシビアになります。)
固定子(ステーター)と回転子(ローター)
※画像をクリックすると拡大表示します。
モーターが回転するイメージ
「ステーター」の巻線(コイル)に交流電源を流すことで、回転磁界が発生させます。
ステーターから発生した磁界により、ローターに誘導電流を発生させ、
その電流と回転する磁場の相互作用によって回転子がつられて回転する仕組みです。
※交流電源は、時間とともに周期的にプラス、マイナスが入れ替わります。
上図の「赤(U)」「白(V)」「青(W)」は、三相交流電源により発生する回転磁界の
イメージ図です。
ステーターに回転磁界が発生することにより、内部のローターが回転します。
また上記イメージ図でも比較していますが、極対とはN極とS極の数のことです。
N極とS極の1組で2P(二極対)、N極とS極が2組あれば4P(四極対)というように、
偶数倍で増減します。またPはPole(ポール)の略語です。2ポールなどと呼ばれます。
極数が多くなると、回転速度が遅く、トルクは大きく、力率が低下する傾向にあります。
極数が少ない(2Pや4P) | 極数が多い(6P以上) | |
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トルク | 小さい | 大きい |
回転速度 | 速い(2P:3600rpm、4P:1800rpm) | 遅い(6P:1200rpm、12P:600rpm) |
※回転速度は、電源周波数が60Hzのすべり等を考慮していない理論値です。
rpmはRevolution Per Minuteの略語で、1分間あたりの回転数です。
3600rpmの場合は、1分間あたりに3600回転します。
ローター(回転子)の構造
ローターバー |
エンドリング |
回転子鉄心(積層鉄心) |
ローターバーとエンドリングが結合され、このような形状となります。 |
ローターバーとエンドリングが結合されたものに、鉄心を組み合わせると、
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ローターバーが、軸方向に対して斜めに切った「斜溝回転子」が使用されていることがあります。
この場合、軸方向に対して平行なローターバーに比べると多少トルクが落ちますが、
ローターがステーターに対してどの位置にあってもトルクが一様となり、トルク変動を抑えることが可能となります。
ローターバーが軸に対して平行 | ローターバーが軸に対して斜め |
---|---|
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ローターバーとエンドリングのみでも回転することはできますが、
鉄心があることにより磁束密度が増え、誘導電流も大きくなるため、モーターのトルクも増えます。
もちろんローターの剛性を高める効果もあります。
軸受部(ベアリング)周り
ハウジング(Housing)とは、機械や部品などを保護する部分のことで言われており、
モーターについては、ベアリングを取り付ける箇所を「ハウジング」と呼びます。
このハウジング部の寸法公差は、使用するベアリング、モーターの種類により寸法の許容値が
決められています。
ベアリングの外径とハウジングの内径を適切に管理しておく必要があります。
またハウジングだけでなく、ベアリング内輪とモーター軸の嵌め合い部の「ジャーナル」の寸法の管理も必要です。
上記表は一例となります。全てのモーターがこの許容値ということではございませんので、
くれぐれも自己判断されないようお願いいたします。
許容値を超えてしまうと、軸受(ベアリング)を適切に保持することができなくなったり、
ローターがステーターの鉄心部に接触してしまい、焼損する恐れがありますので、
かならずオーバーホール時に把握しておく必要があります。
当社では、ハウジングやジャーナルが許容値を超えて摩耗している場合には、
溶射加工をおこない、寸法を許容値内に補修して出荷いたします。