各種絶縁特性試験と判定

絶縁診断試験 絶縁診断

 













診断結果の判定目安
測定内容 概要
1.絶縁抵抗値試験

●絶縁抵抗値から絶縁物の吸湿や汚損状態を確認します

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絶縁物に直流電圧を印加すると、ごくわずかの電流が流れ、電流と印加電圧の比を絶縁抵抗値と呼びます。

絶縁層の劣化、汚損・吸湿状態を測定しますが、測定時の気温や湿度等の影響もあります。

したがって、定期的な絶縁抵抗測定をおこない、長期的な経時変化から絶縁の状態を判定します。


当社の基準では、
低圧機は100MΩ以上、
高圧機は1000MΩ以上を良判定としております。

2.直流吸収試験
(PI試験)

●吸湿、乾燥、汚損、ボイドの状態・劣化を推定します

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絶縁物に直流電圧を印加し、絶縁抵抗値の10分後の値と
1分後の値の比の特性から絶縁層の吸湿・汚損状態を
診断します。

直流電圧印加後、時間とともに上昇する絶縁抵抗値は、
絶縁物の吸湿の度合いに左右され、吸湿しているほど、
電流が一定になる時間は長く、絶縁抵抗値は小さくなります。

また、絶縁体の漏れ電流の時間的増加の有無を調べる試験を、成極指数(せいきょくしすう)といいます。

 

【PI試験(成極試験)】
PI=1分後の電流値/10分後の電流値

絶縁抵抗値1分値
[MΩ]
測定値が低下している場合は、
コイル表面が吸湿している可能性がある
絶縁抵抗値10分値
[MΩ]
キック現象、局部劣化部分(ボイド)があると、部分放電により突変な特性の変化を起こす

 


当社の基準ではPIの値は、
2.0以上を良判定としております。

3.誘電正接試験
tanδ試験)

●吸湿・乾燥・汚損・ボイドの状態・劣化の程度を推定します

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標準電流と充電電流の位相差を測定し、絶縁物・絶縁層の吸湿・表面の汚損、ボイドの状態を推定します。

 絶縁物にボイドのない状態で電圧を上げても、
tanδの値はほとんど変化しません。

ボイドが存在すると、印加電圧に比例し、
ボイド内で部分放電するため、tanδの値は増加していきます。

tanδ 大きいと吸湿、コイル表面汚損が多い
絶縁物の劣化や絶縁層内部が吸湿状態
Δtanδ 大きいとボイドが多いが、
tanδとともに大きい状態であれば、
外部コロナの影響をうけ正確な判定が困難


 
tanδ 大きい 小さい 小さい
Δtanδ 大きい 小さい 大きい
推定結果 ※1 健全 劣化
① ※1
tanδ自体大きくなると、ボイドに関する情報は正確に
得られない場合があります。
② 健全
tanδ、⊿tanδともに小さいと、吸湿がなく健全といえます。
③ 劣化・枯れ
tanδは小さく、Δtanδは大きいと、含浸材は枯れています。

 


当社の基準では
tanδの値は、
3.0以下を良判定

Δtanδの値は、
0.9以下を良判定としております。

4.交流電流試験 固定子巻線と大地間に交流電圧を印加し、
大地絶縁内部のボイドの状態、絶縁物の状態を測定します。

絶縁物に交流電圧を印加すると、電圧に比例し充電電流も比例して増加しますが、比較的劣化の進んだ絶縁物は、2つの電流急増点が現れます。
最初の電流急増点をPi1、2回目の急増点をPi2といい、Pi1が低い電圧で現れたりPi2が定格付近で現れると、絶縁物が吸湿しやすい状況であるか、ボイド内の放電量が増加してきていると推測されます。

 Pi1はボイド内の放電
 Pi2はボイド間を短絡する放電
5.部分放電試験
(コロナ放電試験)
コロナ絶縁層に交流電圧を印加し、発生したパルス電圧から
絶縁物内部の劣化状態を測定します。
1回のみの試験ではなく、経年劣化を把握するため、
定期的な試験を行い、傾向管理されることを推奨します。
6.抵抗容量積
 RC(s)

RC値とBDV(絶縁破壊電圧)[kV]との関係は、
劣化が進むと一般的にはRC値が小さくなり、BDV値が低下する
場合が多いです。


当社の基準ではRCの値は
100[ΩF]以上を良判定としております。

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RC(CR)=時定数τということにもなります。

 



※ボイド:絶縁物内部の微小な空洞のこと。
この部分で微小放電が発生し、絶縁破壊に至る可能性がある。